優雅な楽観主義
- 1963年

長年にわたる戦後不況の後、景気回復がやっとデンマークに訪れました。繁栄、楽観主義および思うようにお金を使うこと、全てが時代の気分でした。効率がよく、男女が等しく働く、民主的な社会福祉国家が産まれます。中産階級では、1960年代半ばまで、結婚した女性は仕事をせず家にいました。彼女たちは低い天井と庭と見渡せる大きな窓のある新しい機能的な戸建ての住宅を美しくしつらえ、家庭生活が上手く運ぶよう気を配るのが仕事でした。10代の子供たちには、みんなビートルズを聴いていました。

現代的な陶磁器

1950年代以降、ロイヤル コペンハーゲンは、デーニッシュモダンスタイルのテーブルウェアを発表します。それは機能的でミニマリスティック、そしてかすかに東洋のエッセンスを感じさせるスタイルでした。それらは、アクセル サルト(Axel Salto)、トリキルド オールセン(Thorkild Olsen)、 ヘニング コッペル(Henning Koppel)、ゲートルード ヴァセガード(Gertrud Vasegaard)および グレーテ マイヤー(Grete Meyer)によって制作されます。そのデザインは、1880年代以降、ロイヤル コペンハーゲンの工場で受け継がれてきた中国や日本の陶磁器に関する深い知識だけでなく、高い芸術性や職人の技によって特徴づけられます。一式に含まれるそれぞれの食器は多くの用途に使われるので、以前よりも一式のセットを構成するテーブルウェアの数は少なくなり、60年代から登場した食器洗い機等その時代のより効率的なライフスタイルに合うものになっていきました。

ロイヤルホテルは、コペンハーゲンの最初の高層ビルで、1960年に開業します。建物もインテリアの装飾もアルネ ヤコブセン(Arne Jacobsen)によって設計され、彼はまたレストラン用に鉄磁器に緑でペイントしたブルーフルーテッドを選びます。彼自身の家でも緑色のブルーフルーテッドを使います。

デーニッシュモダン

当時流行のスタイルはデーニッシュモダンでした。それは高い職人の技を持つデンマークの伝統に由来します。その形態は軽く、有機的で、しばしば中国、特に日本の文化からインスピレーションを受けています。上質な素材が刷新的な方法で使われます。気取らない上品なスタイルは、「レス・イズ・モア(控えめなほど良い)」という中産階級の人間味ある人生に対する態度を映し出しています。多くのデンマーク人もまたデザインに興味を持っていて、日本の建築に刺激を受けながらもデンマークの素材を使う 新しい戸建ての家を求めました。ブルーフルーテッドは、変わらず人気がありましたが、それはおそらく中国を起源として、今の時代の表現法で描かれているからだったと考えられます。1960年代の10年間、ブルーフルーテッドは、それまで以上の売り上げを上げていきました。

デーニッシュモダンスタイルのハンスウェグナーの椅子に座るジョンF.ケネディ。1960年

シンプルなテーブル

今や住み込みのメイドを雇うことは中産階級にとっては過去のこととなりました。あらゆるものがよりシンプルで、よりカジュアルで実用的になります。ダイニングテーブルもずっと小さくなり、 L字型の部屋のダイニングコーナーに収まっています。またここには一緒にその家の最高の陶磁器や来客用のクリスタルグラスが保管されているサイドボードもあり、そこではチーズや美味しいビール、ホームメイドのロールケーキとお茶でちょっとしたカジュアルな集まりが行われますが、それは女主人がすべて自分で用意します。最高のディナーウェアは、多くがブルーフルーテッドで、毎日の食事には家族用のシンプルな焼物が使われます。

IDÉ家具の広告。 1964年、マリッジブックより。

パーティーでのブルーフルーテッド

豊かな1960年代には、ますます多くの人が、新しいものを購入する余裕ができます。上流中産階級の人々は、モダンな家具と工業デザインの中間にあるアンティーク(受け継がれてきたものが好まれます)を自分の家に備えつけました。ブルーフルーテッドのディナーウェアを持っていれば、たとえ前の世代から引き継いだわけでなく自分で購入したものであっても、その人がそれなりの階級に属しているのだみなされました。多くの人は縁のあるシンプルな形状を好み、受け継がれてきたブルーフルーテッドに新たな商品を買い足して、自分達のライフスタイルに合わせていきました。室内のみならず、食事中にも煙草を吸う人がいましたが、本来はメインコースが終わるまで待つのがマナーだとされていました。煙草や葉巻のための灰皿もディナーウェアの一部になっていました。おしゃれな男性は、ブルーフルーテッドのパイプで煙草を吸い、ブルーフルーテッドの煙草入れに煙草をしまうのだとされていました。

ロイヤルコペンハーゲンのブルーフルーテッドパイプの広告

デンマークの母

1775

ウィギリウス エリクセン:デンマーク皇太后ジュリアン マリー(1776年)

ブルジョワジーの時代

1810

C.W. エッケルスベルク:ベラとハンナ。1820年。SMK

世界で一番偉大な存在!

1889

P.S. クロイヤー: ヒルシュスプルング家の肖像。1881年。ヒルシュスプルング。

活況の20年代

1925

オーラフルード: 馬に乗る人。1918年 フォーレグサング美術館

優雅な楽観主義

1963

ジグルド・ヴァンデマールロンホルト: 赤毛の女性。 日付なし。個人蔵。

ミレニアム

2015

キャサリン ラーベン デヴィッドソン:インクルージョン。制作年代不明。個人蔵。