世界で一番偉大な存在!
-1889年
この時代、産業界の有力者がすべてを支配しました。彼らはデンマークののどかな田舎を鉄道や、道路、電信、工場、煙突の煙や密接に建てられたレンガ造りの家が立ち並ぶ街つぎつぎと変えていきます。近代的な体制や仕組みこそが文明の頂点だと考えていたからです。万国博覧会では、人間が作ることができるあらゆるものが展示されました。ブルーフルーテッド フルレースの食器が1888年コペンハーゲンで開催された北欧工業農業芸術展で紹介されます。
繰り返しグランプリを受賞
1884年、ロイヤル コペンハーゲンはアーノルド・クローを迎えます。彼はすぐさまブルーフルーテッドに時代にあった新しい息吹きを吹き込むことに着手します。同時に、彼は全く新しい印象派様式で陶磁器を作り出し、1889年のパリの万国博覧会で、グランプリを受賞しました。それを機にロイヤル コペンハーゲンの工場は国際的な飛躍を遂げていきます。クローの新しい磁器は、日本の芸術に刺激を受け、釉薬の下に、繊細な水彩画のように描いた落ち着いた色でデンマークの自然を映し出しています。ロイヤル コペンハーゲンはパリに出店し、そこには世界中から富裕層、コレクターや美術館の担当者が集まりました。ニューヨークやロンドンの出店もすぐに後に続きます。1900年のパリの万国博覧会で、薄い貝殻にインスピレーションをえたテーブルウェア一式を出展したクローは、個人でもグランプリを受賞します。その蓋のつまみや取っ手はトンボ、マルハナバチや蝶をモチーフにしています。同時にロイヤル コペンハーゲンもグランプリを受賞し、クローの二人の部下は金賞を受賞します。その後数十年間、ロイヤル コペンハーゲンは数々の賞を受賞しました。そのなかでも、ブルーフルーテッドは変わることなく、最も人気を博するシリーズであり続けました。
アーノルド・クロー:自画像 ロイヤル コペンハーゲン
アーノルド・クロー:漁網干魚図花瓶 1887年 ロイヤル コペンハーゲン
ビクトリア朝のスタイル
ビクトリア朝時代は、かつての建築様式の復活であり、クローはブルーフルーテッドが当代の嗜好に合っていることに気づきます。 当時影響力を持った産業界の有力者たちは、昔の貴族の建築やインテリアを現代風につくり、自分たちの存在を主張していました。市内有数の大通りはベルサイユ に似せ、リビングルームはロココ調で、紳士用の部屋はルネッサンス様式で、そしてレディーの控える部屋はルイ16世様式で装飾されていました。床、家具の上、ドアや窓の前には重厚な織物があり、それらはすべてどっしりした縁飾りで装飾されています。家具は部屋のなかにみっしりと置かれていて、テーブルや棚、その他至る所に、お土産や家族の写真のように、その人の思いや思い出をこめた品々が飾られています。
ビクトリア朝の家の1890年のサロン、 国立博物館
ロシア料理用の食器一式
このテーブルは、ロシア料理のスタイルで配されています。 席についている人が同時に同じ料理を楽しめるように、給仕がサービスします。テーブルを飾るのは貴重な器に盛られた食べ物ではなく、貴重な鉢に活けた生花、センターピースや花瓶で飾られます。ひとつひとつの小さな花瓶で飾られる場合もあれば、テーブルクロスの上に広げられる場合もあります。ここで最も重要なのは、1人用のセッティングが、コースの料理や飲み物ごとにそれぞれ用意されていることです。魚、ブイヨン、スープ、前菜、メインそしてデザート用に特別なカトラリーが用意され、さまざまな飲み物の種類ごとのグラス、またウミガメスープ、ブイヨン、スープ、サラダ用などに異なるテーブルウェアが用意されています。このようなテーブルセッティングでくつろぐには、上流階級の礼儀作法を身につけているか、当時の礼儀作法について書かれたたくさんの本でよく身に着けておくことが必要でした。
19世紀終盤、ブルーフルーテッド フルレースでセッティングされたテーブル。1888年 ロイヤル コペンハーゲン
新しいブルーフルーテッド
ロイヤル コペンハーゲンに迎えられるとすぐ、アーノルド・クロー は1700年代の昔のブルーフルーテッドに刺激を受け、廃れてしまったパターンを簡素化し、当時の上流中産階級の食事の時間にマッチするような数々の新しいテーブルウェアをデザインします。彼はまた、デザート用の昔のブルーフルーテッド フルレースにも刺激を受け、縁にレース模様のオープンワークを施した大きく豪華なディナーウェアを制作します。これは1888年にコペンハーゲンで開催された北欧工業農業芸術展に出展されます。 その重厚な装飾はその時代の ひだ飾りのたくさんついたインテリアによくマッチしました。アメリカから助成を受けた彼はまたブルーフルーテッド ハーフレースのディナーサービス一式もデザインします。 ブルーフルーテッド ハーフレースもまた1700年代に作られていましたが、当時はデザートサービスのみでした。
生花装飾のための鉢。 アーノルド・クロー、1886年 ロイヤル コペンハーゲン